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「やっぱり悔しかった。すっごい落ち込んだ。親友も『応援してるよ』なんて言いながらちゃっかり距離近くしてたり、幼馴染も思わせぶりな事しといてあっちとくっつくし。もう『わざとあたしに嫌がらせしてんの?』って恨んだりもした。けど…… 惚れた弱みなんだろうね。好きな人が嫌がる事、出来なかった」
強がった笑顔とは反して、声が微かに震えている。それを分かりながらも、沸々と湧き上がる悔しさを噛み殺して、ただ静かに今岡さんを見つめていた。
「だからさ、青空と海のある、あの時と同じシチュエーションで告白されてやるの! それもアイツより優しくて最高の王子様みたいな人に! そんで幸せになってやんの! でないと、こっちは未練ないのに……」
そう無理にお茶ら気ながらも、最後とうとう悔しそうに顔を歪ませた今岡さん。
それが初めて彼女が隠さなかった表情だったからだろうか。それとも『未練がない』と自分に言い聞かせているように聞こえたからだろうか。
気付けば、放っておけない気持ちのせいで、今岡さんを抱きしめていた。
「1人、頑張ったんだね」
海は肩を震わす彼女の嗚咽を掻き消すように荒れている。
いつもなら、慌てて謝りながら離れるだろう。けど、我に返る前にそっと、彼女の腕が回ったのがわかった。それに応える様に、少しだけ強く抱き返す。
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