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俺は『青空』が嫌いだ。暑いし、感情もわかんないし、似合う人間じゃないと馬鹿にされてきた。
けど、何で今出てこねーんだよ。今ぐらい出てきてくれよ。
隠れる真上の憎い相手を精一杯睨んでやる。すると、太陽の光が雲の隙間から零れだした。
「今岡さん、晴れてきた」
そう言っても、彼女の腕は自分の背に回ったまま。
確か、買った小説に書いていた。『聞く事は話す為のエネルギーを貰う』と。だから、今岡さんの話を聞くと本心を言いたくなるのかもしれない。
ただ、俺は言葉を操る事も、天気を変える魔法もない。だから中途半端に嘘を吐く。
「すっごく綺麗な青空」
6つ目の嘘は、そんな事一度も思った事ないのに、夕日で真っ赤に染まる空を睨みながら口にした。
まるで『お前じゃ無理だ』と舌を出している様な景色。でも……
「幼馴染にも、期待してる王子様にもなれないけど…… 俺じゃ、ダメですか?」
アイツよりも大切にするから。アイツを忘れて笑えるまでの、代わりでいいから。
そう、この時に思ってしまった。
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