13人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
次の金曜日。
春休みが始まって最初のスターフロントデー。俺は長期休みの間でも彼女に会える事が何よりも嬉しかった。今日はどんな話をしようか。案が桜の花の様にふわふわと咲き乱れる。
期末ボロボロだったけど、小説を読むようになって現代文の点数だけが異様に伸びた話でもしようか? いや、小説好きじゃない事がバレてしまう。
先週買った小説が面白かった話は?
そういえばスターフロントで期間限定苺フラペチーノがもうすぐ始まるらしい。今岡さんにも教えないと。
そんな事を考えながら、いつも通り早めに着いた俺はスターフロントの前でスマホを弄っていた。
暫くして耳に入る地面を叩く音。その瞬間、硝子の画面からニヤけた顔を上げる。
「こんにちは。今岡さん」
その言葉に、いつも彼女は笑顔を見せてくれる。
しかし、今日は俯いたまま。
「青田君……」
声もどことなく暗く、先程咲き誇っていた俺の考えも一瞬で散っていく。
「どう…… したの? 何かあった? お腹痛いとか?」
「ううん。とりあえず、入ろっか」
そう静かに、どう考えても不機嫌に、今岡さんは杖を突きながら1人で歩いていく。そして自動ドアも彼女の雰囲気に押される様に足止めする事無く開きやがる。
いつもは片手を差し出す俺もどうするべきか分からず、彼女の後をただ追いかけるしか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!