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『西高の青田なんて聞いた事ねーって 西高の奴に聞いた』
『それとやっぱ足立は西高だった 見た目だいぶ変わってたけど、垂目と涙ぼくろがそんままだったし、絶対アイツ足立だって』
『騙されてんだよ 小学校の時の事根に持ってんじゃねーの?』
『アイツはやめとけ からかわれてるだけだ』
そんな横書きの文字がずらりと並んだ画面に、何も言えなかった。
今まで自分の嘘がバレたら焦るだろうと思っていた。だけど、抗う気も、言い訳をする気も全然起きない。ただ、声を震わしている今岡さんを前にわかった事がある。
幼馴染なのも王子様も“清水”の方で、嘘しか言えなかった俺が、ヒロインを悲しませる悪役だったんだ。
「ねぇ…… 何で騙してたの?」
本題を点いた言葉と共に、彼女の頬から涙が光った。
「楽しかった? 揶揄って」
「ち、違う。そうじゃなくて」
「違うって何が? 嘘吐いてたのに変わりないじゃん」
少しだけ、今岡さんの言い方がきつくなる。自業自得だけど、きっと今の彼女に何を言っても信用される事は無い。
「だから、小説もわざと褒めてくれたの? 内心馬鹿にしながら。本当は面白くなくても適当に感想言って、変換ミスあっても黙ってたんでしょ?」
「そんな事!」
『ない』が出てこない。
小説は本当に面白かった。それに色々犠牲にしてでも頑張って感想を考えた。
それを否定された苦しさと、自分の小説に自信を持って欲しい気持ちが声を大きくさせたのに『変換ミス』が声を途切れさす。
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