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「もう、いいよ…… ごめんね」
涙を拭う事無く、今岡さんがいきなり頭を下げたのを見て、思わず「え?」と声が漏れる。
謝らなければならないのはこっちだ。なのに、顔を上げてもらおうとアタフタする事ぐらいしかできない。
「…… 小学校の時、守れなくて、ごめん」
そんな情けない俺に、彼女の言葉が刃物のように突き刺さった。
そして刺したのは今岡さんではなく、ヒーローの様な彼女を泣かせ、謝らせた弱い俺だ。
「コンテストは…… 諦めるから」
「ちょ、ちょっと待って、何で」
「強がってたけど、元々自信なかったし。それに、足立君はもっと辛い思いして……」
「違う! 今岡さんのせいじゃ無い」
突然の大声に、今岡さんの肩がびくりと上がるのがわかった。
ただ、『青田 こーき』から嘘吐きなチビデブに戻った俺じゃ、後の言葉が続かない。
でも、もうこの際自分がどう思われようとどうでも良い。どうか、もう一度。
「今から言う事、信じられなかったら信じなくていい。ていうか、信じたくないかもしれない。けど、本当の事、最後まで聞いてくれる?」
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