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「今岡さんから借りた原稿を基に、誤字とか変換ミスを勝手に直した原稿を渡してました」
彼女には伝わらないかもしれないけれど、額をテーブルぎりぎりまで近づける。
「内容とかは勿論変えてない。それに本当はちゃんと言うつもりだったんだ。けど、今回がラストのチャンスだって教えてくれた時、勝手に、自信無くしちゃうんじゃないかって、言えなくて……」
「あの文章全部目を通して…… ミス修正したの?」
今岡さんの言葉に、顔を上げる。そこには驚いて目を見開く彼女が居た。そりゃ引くよな。有難迷惑だったよな。
「本当に、ごめん……」
そう謝る事しか出来ない。
「小説なんて今まで読んでなかった俺が言っても説得力無いかもだけど、本当に素敵な作品だった! 感想で嘘吐いた事無いから! でも、1回だけ『ありふれた。』のモデルが幼馴染って教えてくれた時、『続きが楽しみ』って言いながら結構ショックで……」
「幼馴染が清水だって…… 知ってるもんね」
今岡さんが俯きながらつぶやく。きっと、昔虐めてた清水がモデルだと知って俺がショックを受けたと思っているのだろう。
「清水は関係ない。ただ…… 今岡さんの好きだった人聞いて勝手にショック受けただけで……」
パっと彼女の顔が上がる。戸惑ってる、そんな表情で。それが一層自分の心も表情も握りつぶす様に歪ませた。
そりゃ、嘘つきのチビデブに言われたくないよな。こんな嫉妬じみた言葉。
「俺で…… 本当にごめん」
気が付けば、さっき見えていた彼女の表情がぼやけだす。
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