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「勿論、海の告白も無かった事にしていいから。いや、もうここで俺の事振って貰っていいから。何ならあの時本当は青空じゃなくて夕日だったし…… ホント、カッコ悪いよな」
もう十分情けないけど、どんな表情してるかだけは悟られたくなくて、自然と自虐が零れていた。
「だから…… 揶揄ったとかじゃないんだ。本当に今岡さんの小説面白かった。書籍化されたら絶対買うから。俺に読まれたくないかもだけど」
俺が言えた言葉じゃないだろうけど、お願いだ。どうか、夢を諦めないで。どうか、夢を叶えて幸せそうに笑って。
「本当に、今岡さんには感謝してて、恩返ししたくて……」
どうか、今の俺の表情に気付かないで。そして、どうか。
「好きだったんだ」
最後の嘘に気付かないで。
「安心して。昔の気持ちで、もうこれ以上関わらないし、迷惑もかけないから」
「……昔って」
今岡さんが表情を歪ましながら再度目を潤ませたのが、視界の悪い中でもわかる。
そりゃ、昔でも嫌だろう。こんな顔してる彼女に口が裂けても『今も好きです』なんて言える訳が無い。
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