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「それって…… 今のあたしには、同情してたから嘘吐いたって事?」
「え……」
その言葉が自分の頬を思いっきり殴った。
「…… 否定してくれないんだね」
その声はまた震えている。
「盲目になってからわかったんだけど、過度な贔屓とか特別扱いってさ、差別と同じくらい傷付くの。我儘だって思われるかもしれないけど、誰だって出来る事、出来ない事はあるでしょ?」
『何で苦手な物を皆と同じように出来なきゃいけないの?』
今岡さんの言葉と、昔の自分が重なる。
「出来ない事を補い合うのは皆一緒だよね? なのに、目が見えないからって、そんなに腫れもの扱いされなきゃいけないの?」
あぁ、そうか。“普通”を隠れ蓑にしだした俺は、心のどこかで“皆と違う”今岡さんを可哀そうと思ってしまっていたんだ。
今岡さんを傷付けたのは嘘を吐いたからってだけじゃない。彼女は盲目である事を既に受け止めて努力していた。その姿を見て、今まで勇気付けられていた筈なのに。俺が勝手に助けたいと思ってしまった時点でそれはエゴでしかなかったからだ。
ただ、好きな人だから助けになりたかったっのも確かだ。けれど、もうそれは伝えられない。
「ごめん…… 今まで」
自分の事で精一杯だった。彼女の事、本当にわかろうとしてなかった。そしてまた嘘を吐き続けている。そんな奴の謝罪なんて、届く訳が無い。
今岡さんは、目の前のカフェモカを残し、何も言わず1人でスターフロントを出ていったが、俺なんかが後を追う事も出来なかった。
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