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「あ、あの…… ごめん。関わらないって言ったのに…… じゃ、じゃあ」
「待って」
横切ろうとした瞬間、彼女の声が俺の袖を引っ張った。
「あの、お願いがあるの…… 足立君に」
その言葉に振り返ると、今岡さんは肩からリュックを外し茶封筒を取り出している。
「『ありふれた。』の最終章」
「え? ど、どういう……」
差し出された茶封筒を前に、全然意味が分からず中々手が出ない。そんな俺に気付いていない今岡さんは大きく息を吸った。
「感想と修正、お願いします」
その瞬間、踏まれてドロドロになっていた筈の花びらが、春風によって再度美しく舞い上がった。
「何で…… 俺で…… いいの?」
「だってファン1号なんだもん、足立君が。それに……」
ピンクの頬を綻ばせた今岡さんに胸がドクンと跳ね上がる。
「あたし、足立君の話聞くまで忘れてたみたい。絶対やり返したりしない人だって知ってたはずなのに。だけどあの日、色んな事聞きすぎてパニックで、酷い事言っちゃった。ごめん」
「あ、謝らないで。謝るのはこっちの方だし」
頭を下げた彼女に慌てて、顔を上げてもらおうと肩に触れそうになる。けれど、その手を引っ込めた。俺は今岡さんの彼氏では無いし、チビデブのイメージがある筈だ。
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