今岡さんの本音

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「じゃあ、小学生の時片思いしてた相手の弱みに付け込んで付き合おうとしてたとか?」  は?と心の中で声が漏れた。そして清水の表情が確信犯であるかのようにニヤリと笑ったのがわかった。 「そうだよなー。友達も居ないお前の味方なんて、由希しかいなかったもんな。だからって嘘まで吐くか?」  何でそこまで知ってんだ。いや、頭の良いコイツの事だ。  そう思った瞬間、態々(わざわざ)他高の奴に聞いてまで俺の事調べていた事、制服からしてそこそこ離れた学校の筈の清水がここに居る事、その不自然な状況が整理されていく。  考えている間に、清水は俺の手を振りほどくと、わざとらしく今岡さんの肩を抱いて見せた。それがいきなりすぎて「きゃっ」と今岡さんは小さな悲鳴を上げる。 「おい!」  今までに出した事も無い低い声が自分の口から出ていたが、そんな事どうでも良い。  しかし、清水は動じる事も無く勝ち誇った様な表情のまま。 「デブ勉がヒーロー気取りですか? なれる訳ねーだろ」  俺を見下した清水の目つき。『デブ勉』と嘲笑った言い方。  あぁ、これだ。違和感の正体。 「……ヒーロー目指して何が悪いの?」  次に自分の口から出た声は、いつも通りの高さだった。  勝算が無い? それはチビでデブだった時の話だろ。
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