今岡さんの本音

9/10

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
 そして2人で春限定の苺フラペチーノを頼み、いつもの席に座る。するとどちらかともなく自然に笑いが込み上げてきた。  悪戯した後の様な、甘酸っぱい気持ちが笑い声となり消化していく。らしくない事をした筈なのに、偶には良いかもしれない。 「凄い嘘吐いたね。今岡さん」  笑いすぎて痛い腹筋を抑えながら、どうにか言葉にする。 「嘘って?」 「前まで嘘吐いてたデブ勉にカッコ良いなんて…… あれじゃ俺が彼氏役だって直ぐバレるよ」  そう自分で言いながら少し胸が締め付けられる。女々しいのは俺もだ。 「あたし、別れたつもりないんだけど?」 「……え?」  そう声が出たのは、今岡さんが苺フラペチーノのストローを咥えた時だった。 「それに言われたんだ。春休み、ここで足立君待ってた時にお婆さんから『毎週ここに居るの彼女さんよね? 彼にお礼言っといてね』って」  春休みここで待ってた? でも最後に会った時は俺が待ってたし、その後も来てたって事? それにお婆さんって? お礼って事は地下鉄教えてあげた時の? それよりさっき何て…… ? 「それとも…… あたしフられてた?」  その言葉と少し無理した笑顔がそんな問題を吹っ飛ばした。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加