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05
今思い出してみても予感めいたものがあった。初めて彼を窓の向こう、お日さまの下で見つけた瞬間に。先生に呼ばれて入って来たのは思った通りに彼で、一瞬、教室がしんと静まり返った。
「イギリスからの短期留学生のジョン・クラウスくんだ」
先生のその一言で、止まった時間が動き出す。
当時の彼は既に何年か留年していたようで、年齢的には僕らより二歳年上だった。だからだろうか。身長はすでに180センチを越えていて、大人の池間先生よりも10センチ近くも背が高く大人びて見えた。
反して標準よりも小柄だった僕は当時はまだ成長期の真っ只中で、160センチにようやく背が届いたところだった。
透き通るような白い肌、硝子のような青い瞳。金色で少し長めのストレートの髪は、風にさらりと靡くだろう。
「ジョンです。ヨロシクおねがいします」
片言の日本語で彼がそう挨拶すると、矢継ぎ早にクラス中から質問が投げ掛けられた。
男子からは彼の祖国、イギリスに関する質問が大半で、女子からの質問はガールフレンドはいるかだとか好きな子はいるかだとかな恋愛に関するものが多かった。
それは彼がハンサムでとても綺麗な顔をしていたことは勿論、完璧なほどのアイドル性も備え持っていたからだろう。
「ガールフレンド? いるよ。オフコース」
そんな一問一答に女子の溜め息が漏れる。実は、ガールフレンドは英語でいうところの女友達を指していたのだけれど、女子たちが上手く誤解してくれたお陰で彼に悪い虫がつくことはなかった。
僕らが通ったその中学は海沿いの片田舎にある小さな学校で、海外から留学生が来たのは初めてのことだった。
だからか噂はすぐに町中を巡り、休み時間ともなると他のクラスからも生徒が押し寄せて、鍋をひっくり返したような大騒ぎになる。
「えーと、じゃ。席は窓際の一番前な。あそこに座って」
一番目立つ、先生の目が届く場所が彼の席だった。彼が席に着く時にこちらをちらりと見た瞬間、一瞬だけ彼と目が合って。
胸の奥がわけもなくきゅんとしたっけ。
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