14人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「今日もいたね」
そう言うと、彼女は昨日と同じく僕と同じベンチに腰かけた。そして真っすぐに夕焼けを見た。
「…真木野修太くん」
彼女は僕の名前をさらりと言った。僕は驚いて彼女の顔を見た。彼女は僕の方を振り向くことなく、微動だせずに夕焼けを見ていた。
「君は、何か探してるの?」
そう言って、僕の方を向いた。初めて目が合った。次の瞬間、彼女はそっと微笑んだ。何?なんで僕の名前を知ってるの?
「あの日から、君は何かを探してるの?」
彼女は微笑みから真顔に戻り、僕に問い掛けた。僕は彼女の目を見つめながら、心臓が高鳴るのを感じていた。この人は…。
「君は…誰?」
気が付くと、僕は彼女に問い掛けていた。僕の…何を知ってる?
彼女は僕の質問に答えることなく、ふわりと微笑んだ。夕日に照らされた彼女の顔は陰影がはっきりしてて、僕の目に焼き付いた。
そしてすっとその場から立ち上がると、何を言うこともなくベンチを後にした。
「ちょっと、待って!」
僕もベンチから立ち上がり、彼女の後姿に声を掛けた。しかし彼女は振り返ることなく、公園から立ち去った。
僕は呆然と立ち尽くして、彼女を見送るしかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!