過 去

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 5年前まで、僕は普通の小学生だった。父がいて母がいて、毎日忙しくゲームに勤しむ、どこにでもいそうな子供だった。  教室では流行りのゲームの話をして、互いの進み具合を伝え合っては一喜一憂し、その日のゲームでやるべき課題を見つけて帰宅する。宿題は速攻で終わらせて、ゲーム機にかじりつく。  あの日もそうだった。夕食を終えて、自分の部屋に戻りゲームをしていた。お風呂に入るよう促されても空返事をするばかりで、僕はなかなかゲームの世界から抜け出せずにいた。  いい加減、痺れを切らした母親が部屋の前まで来て、僕を名指しで怒鳴るまで、僕はゲームをやめなかった。今思えば、もっと素直に言うことを聞いておけばよかった。  渋々風呂に入って歯磨きを終えたら、また部屋に籠ってゲームに没頭した。さすがに夜中まではしなかったが、帰宅後はほとんど外に出ることなくゲームをする。そんな毎日が日課になっていた。
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