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深く眠っていた深夜、父から突然起こされた。初めはうっとうしくて無視していたけど、ただ事ではない父の様子に、僕は寝ぼけ眼でベッドから起き上がった。
「修太!火事だ!すぐに逃げろ!」
父はノックもせずに僕の部屋へと押し入り、僕を抱えてベランダに出た。1階は既に煙に巻かれていて、とても踏み入れられない状況だった。
父は僕を抱えて、2階からカーポートへと飛び降りた。激しい音と共にカーポートに打ち付けられたが、何とか2人とも無事だった。素早く家から離れ、僕の安全を確保すると、父は家へと駆け出した。
「父さん!」
僕は父の後ろ姿に叫んだ。父は振り返ることなく、もくもくと黒い煙を吐き出す家に飛び込んだ。煙は1階だけではなく、2階からも激しく出て、辺りの空を更に黒々と染めていた。
「とうさぁーん!!」
僕は立ち上がり、父の後を追おうした。しかし、騒ぎを聞き駆けつけた近所の人に止められ、僕は身動きが取れなかった。
消防車が到着し、すぐに消火活動が開始された。
「とうさん…」
僕は目の前に炎々と立ち上る炎を前に、呆然と跪くしかなかった。
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