少 女

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 その日もフリースクールの帰りに、いつもの公園に寄った。この公園は今住んでいる祖父母の家から300m坂道を下ったところにあり、スクールの行き帰りには必ず通らなければならない道だった。  フリースクールに通い始めてから3か月くらいしてからだろうか。いつも通り過ぎていた公園に、ふと立ち寄ったのがきっかけだった。家に帰っても別にすることはなく、ベッドの上でずっと天井を見つめながらもの悲しさや焦燥感に襲われる時間を過ごしていた。  少しは気が紛れると思ったのだろう。僕はベンチに座って夕焼けを見ながら時間が過ぎるのを待つことにした。しかし、もの悲しさや焦燥感は、一向に減ることはなかった。  轟轟と渦巻く哀愁と焦りを胸の内に抱えながら、ベンチから足を投げ出し、街並みを見下ろした。何の変哲もない街並み。この1年、何も変わっていない気がする。いつもの場所に郵便局があり、自動車整備工場がある。県道を行きかう車は少なく、見てても楽しくも嬉しくも何ともない。僕は無為な時間を過ごしているに違いない。でも、それでいい。何をやっても意味なんてないし。 「あ、今日もいた」  今日も後ろから声がした。ゆっくり振り向くと、昨日の女の子がこちらに向かっていた。  僕はその存在を打ち消すように、視線を夕焼けに戻した。
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