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PM4:30
カフェに2人。彼と私の秘密だった。
私がプリンに手をつけると彼は机に伏せた。スラリと長い足がこちらまで伸びている。ピンヒールが好きだと彼は言った。私が履くから好いのだと。だから。
ガスッ
彼の足を踏みつけた。ヒールはスニーカー越しに肉と骨の感触を見つける。机上のコップが揺れる度、彼は恍惚とした表情を浮かべた。嗚呼、なんて、滑稽な。
水面に映る私の顔が醜く歪む。夕暮れの光に解けたそれは次第に彼を映し出す。その、目。その、物欲しそうな眼。揺れて見えたのは、透明な水のせいか、それとも。
「僕に付き合って欲しい」
特別な感情なんて何も無い。品行方正、文武両道、貼られたレッテル。膨れる欲望のはけ口を腐れ縁に求めた。そんな、酷い人。
表面張力でコップに留まる水はなんとも頼りない。そのまま口をつける。その姿でさえ、絵になるような男。私に向かって差し出されたコップ。まだ半分以上残る水。懇願するような、瞳。
あぁ、もう。
ひったくるように受け取り、飲み干す。そして、思いっきり脛を蹴った。骨の感覚がかかとに響いた。
私に出来ることは、これくらいだった。
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