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「お嬢さまーーー! どこですかぁーーー!!!」
さっそく外から侍女の声が聞こえてきた。
敷地内にいるのなら本気で逃亡する気はないだろうから、呼びかければ出てくるかもしれない。問題は本気で逃亡しようと敷地外に出てしまった場合だ。取り返しのつかない事態になっていないことを祈るしかない。
アーサーは執務机につき、かすかに震える両手を組み合わせてうつむく。
すまない、シャーロット——。
そこまで嫌なら断ってやりたいが、陛下の口添えに従わなければ叛意ありとみなされてしまう。爵位と領地を没収されるくらいですめばまだいいが、家族もろとも処刑ということもあり得るのだ。
結論の出ないまま胃が痛くなるようなことばかり考えていると、にわかに書斎の外がざわめく。すぐにバタバタと足音がして、開けっ放しにしていた扉の向こうから侍女のエリザが飛び込んできた。
「お嬢さまがお戻りになりました!」
アーサーは息を飲み、はじかれたように椅子から立ち上がった。
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