エピローグ 〜 公爵家の幼妻は旦那様と仲良くしたい

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「すみません、お待たせしましたか?」 「いや」  彼は自分の隣をぽんぽんと叩いて、おいでと言う。  シャーロットは扉を閉め、素直に示されたところまで歩いていくと腰を下ろした。そのとき彼の手にしているものがチラリと視界に入った。どうやら紙片の束のようだ。 「もしかしてお仕事でした?」 「これは違うよ」  そう笑いまじりに答えながら手渡され、瞬間、小さく息を飲む。  そこには幼いころの自分自身の顔がうつっていた。おそらく初めて写真を撮ったときのものだろう。まだ五歳くらいで、何もわからないまま写真技師に撮影されたことを、おぼろげながら覚えている。  あわてて一枚ずつ確認するが、他もすべてシャーロットを被写体にした写真だった。幼少期から最近まで成長を追うようにそろっている。ただ、染みがついていたり波打っていたりと傷んでいるものが多い。 「ずっと大切にしてた俺の宝物」  彼はシャーロットの手からまとめてそれを抜き取ると、サイドテーブルに置いた。  どうしてあなたが——ずっとというくらいだから、婚約してから譲り受けたわけではないのだろう。そのときどきで手に入れていたのかもしれない。いずれにしても入手先として考えられるのはひとつだ。 「父から?」 「そう、あの誘拐事件のあとアーサーに頼んで写真をもらってたんだ。そのためにつきまとってたから懸想してるとか誤解されたんだろうが、事実無根だからな。俺が好きなのは今も昔もシャーロット、君だけだ」  躊躇いもなくまっすぐに目を見つめながらそう言われ、鼓動が跳ねる。しかしながら素直にすべてを信じることはできなかった。
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