不思議なマッサージ屋さん

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 また今日もダメであった。 ギルドの案内所で適正がある職業を求めたものの、何の収穫も得られずに帰ってきた。 「はー、錬金術もダメだったかー私って才能ないのかも」 寂れた安宿のベッドにゴロンとなりボソリと呟いた。 この部屋にはこのベッドの他にはボロボロの机と椅子しかない。 立派な冒険者になり、故郷に錦を飾るのだと田舎を飛び出しはいいものの、私の冒険者ライフは最初からどん詰まりであった。 今の私の生活といえば、所属させてもらっているギルドのあてがいぶちという名の初心者用の、補助金を食い潰していくだけである。 「帰ろうかな……いや!まだだ」 この自問自答をもう何十回、何十夜と繰り返したが本当にそろそろ職業につかないとこのあてがいぶちもなくなってしまう。 私は明日に備えて、寝ようかと床につこうとしたその時である。 コンコンと私が宿泊している安宿のドアを叩く音がした。 こういうとき、こういうところに来る訪問者というのは大概面倒というのが相場だ。 私は無視しようかとも考えたが、一瞬の気の迷いで「はい」と返事をしてしまった。 「入ってもよろしいですか?」
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