不思議なマッサージ屋さん

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彼女は紅色の頬を赤らませながら言い、その姿がなんとも不安そうで尊いよう思えた。 「是非是非、私も自己紹介していなかったね。私の名前は、フウカ。よろしくね」 「ところでどうして数ヶ月ずっとここにいらっしゃるんですの?普通冒険者はさすらいの身として長居はしないはずなのに」 「それは……」 私には笑って誤魔化すしか為す術がない。 けれど彼女は余計不思議そうな顔を浮かべて、なんで?と表情で尋ねてきた。 「それは、なかなか自分に適正のある職業が見つからないからです。私冒険者には向いてないのかも」 「まあ」 彼女は一言軽く呟いた。 ヤカンから白い煙があがりだし、グツグツと音を立て出す以外には部屋に静寂が流れた。 「冒険者としてはどうかはわかりませんが、きっとなにかの才能は眠っているとそう思いますわ」 先に口を開いたのは、アリスの方である。 「ううん、冒険者じゃないとダメ。じゃないと、田舎から女の私をわざわざ街まで送り出してくれた両親に顔向けできないもの、それに……」 続きを言いかけ辞めた。 続きの言葉は私の小さい頃からの夢のことだ。
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