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良太の唯一の友は、小説だった。
図書室で借りられるタイトルをあらたか読み尽くすと、小遣いで買って読むようになった。
小説の世界は無限に思えた。
手のひらに収まってどこへでも持ち運びができ、ゲーム機のように電気も専用の機械も必要とせず、めくるめく冒険の地へと連れて行ってくれる……。
いつか自分も作る側になってみたいとは思いつつも、ついに文芸部へ入らずに終わった。
高校生になろうとする良太は、さすがに同じ轍は踏むまいと思った。
座して待っても友は湧いてこない。
自ら動いて友を得るのだ。
志だけは立派ではないだろうか。
しかし悲しいかな、中学3年間のソロ活動は、良太のコミュニケーション能力を完膚無きまで退化させていた。
人とうまくやっていく力は、ある意味で筋肉のようなもの。
使い込めば柔軟かつ強靭にもなり得るが、使わず放置すれば強張り衰える。
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