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「別に怒っている訳じゃないよ。顔を上げて欲しいな。四季の顔が見たい」
言われた通り顔を上げると唇に柔らかな何かが触れた。温かくさらりとしたそれは、一瞬触れ、離れた。
それが彼の唇だと気付いたとき、全身が朱色に染まった。どうしていいか分からず戸惑っていると、今度は強く抱き締められた。
「あーー」
不意打ちに慌てた。
「もう二度と俺の以外の男に裸は見せないでくれ。もちろんたもくんにもだ。頼むから約束してくれ」
逞しい腕の抱擁は情熱的で、苦しさに息が詰まりそうになった。
激しいけど乱暴ではなくて。
込み上げてくる気持ちをそのままぶつけてくるかのような抱擁だった。
「分かった。約束する」
「ごめんな。焼きもちを妬いたりして。みっともないな」
腕の力を緩めるとばつが悪そうにポツリと呟いた。その声は切ないものだった。
「そろそろ上がろうか?逆上せたら大変だ」
「和真さん」
離れていくのか寂しくて。思わず腕にしがみついた。
「僕の方こそごめんなさい。これからは気を付けるから、だから、その」
「たもくんを別にどうこうしようなんて考えてないよ。四季の交遊関係をもう一回洗い直すためにはどうしても彼の証言が必要になる。喧嘩はしない。話しをするだけだ」
彼の手が頬に触れてきて。
どきっとして顔を見上げると額に、鼻先に、そして最後に唇に口付けをされた。
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