ただいま駆け落ち中(仮)

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「もしかして副島……さん?」 動揺し声が震えた。どう考えても彼しかいないもの。今ならまだ間に合うかもしれない。 ご近所の皆さんに挨拶をしてから車椅子を押して大急ぎで玄関に向かった。 「副島さ……」 声を掛けようとしたけどちょうど電話中だった。 「分かった。これからそっちに向かう」 スマホを耳から離すとドアノブに手を置いた。 「副島さん待って下さい」 嫌われているのは分かっている。でも今言わなきゃ絶対に後悔する。 「沢山の服をわざわざ届けて頂きありがとうございます」 頭を下げられる所まで下げた。ふんと短く吐き捨てると立ち止まることなくドアノブを押した。 「副島!」 僕のあとを追い掛けてきた彼が慌てて呼び止めるも何事もなかったのように出て行ってしまった。 「ねぇ和真さん、僕どうしたらいいの?」 彼を見上げると、眉間に皺を寄せ腕を前で組みなにやら考え込んでいた。 「和真……さん?」 「靴があるのに何でわざわざ新しいのを買って来たのかなってずっと不思議だった。しかもそれだけ値札付きだ。やっぱりなにかがおかしい」 彼が小声でそう言うと、しーと人差し指を唇の前で立てた。そのまましゃがみこむと僕がいつも履いている厚底のスニーカーを手に取るなり靴も履かず外に飛び出した。
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