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脱衣所のドアを開けると中はファンヒーターの温風でぽかぽかと暖かくなっていた。
「姉さんのお節介やきと面倒見の良さはお婆ちゃん譲りなんだ。大丈夫?引いてない?」
「はい、大丈夫です」
「お爺ちゃんも四季に会いたくてしょうがなかったみたいだ。だから、ほら、四季が風邪をひかないようにってファンヒーターをわざわざ倉庫から引っ張り出してくれたんだよ」
「ちゃんとお礼を言わなきゃ」
「そうだね」
車椅子を押してくれていた手を離すと、自分が着ているものをひとつひとつ脱ぎはじめた。やせっぽちの貧弱な体の僕とは比べようもないくらい大人の男の人の身体だ。
逞しい身体に思わず頬が熱くなる。
しなやかに筋肉のついた身体は、細身だけど均整が取れている。
思わず見とれてしまうと、目が合った和真さんに苦笑いされてしまった。
「先に行って待ってるよ。ゆっくりおいで」
全てを脱ぎ終わると浴室へ入っていった。
一度彼に見られているから今さら恥ずかしがっている場合じゃないのは分かってるけど、恥ずかしいものは恥ずかしいんだからこればかりはしょうがない。
深呼吸して気持ちを落ち着かせてから、シャツのボタンをひとつずつ外し、時間がいつもの倍掛かったけど何とか服を全部脱いだ。
でもやっぱり恥ずかしくてバスタオルで前を隠してから意を決し浴室のドアを開けた。
あれ?和真さんはなぜか後ろ向きにお風呂に入っていた。
「四季は恥ずかしがり屋さんだから、やっぱりひとりで入りますって言われたらショックでしばらく立ち直れそうにないから。前、向いても大丈夫?」
「あ、は、はい」
耳まで真っ赤になりながら頷くと、くるりと彼が体の向きを変えて立ち上がった。
「ゆでたこみたいに真っ赤だね。そんなにガチガチに緊張しなくても大丈夫だよ。肩にしがみつけるか?タオルを体に巻くから」
「はい」
言われた通り肩にしがみつくと腰が浮いて、タオルを体に巻いてくれた。
「これなら恥ずかしくないだろ。じゃあ、入るよ」
お尻に手が差し入れられ横に抱き抱えられ、慎重に、ゆっくり、ゆっくりと湯船に入っていった。
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