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「4か月振りのお風呂だ。温かくて気持ちいい。檜の香りもすごくいい」
そのまま彼の膝の上に横向きでちょこんと座った。
心臓がドクンドクンと早鐘のように鳴り響き、顔を上げることが出来なくてずっと下を向いていたら、彼が手でお湯を掬い、肩に掛けてくれた。
「ありがとう和真さん」
「なぁ、四季?」
「はい」
「今確か4か月振りって言ったよね?誰に入れてもらったの?」
「え?」
ドキっとして顔を上げると怪訝そうに眉を寄せる彼と目が合った。
自分の失言に気付いたときはすでに時遅し。
「四季、やましいことがないから、誤解する前にちゃんと答えてくれるかな?それとも」
「違うの。あのね和真さん、商店街の福引きで一等賞の一泊二日温泉ペア無料宿泊券が当たったんだ。僕、車椅子だし他に一緒に行くひとがいないから、きよちゃんとたもくんにプレゼントしたんだ。そしたら、たもくんが自分が面倒みるからって僕のこと招待してくれたんだ。もちろん部屋は別々だよ。ただお風呂だけは一人じゃ入れないからって、たもくんが入れてくれた。だから、その……」
段々自分で何を言ってるか分からなくなってきた。なんともいえない気まずい空気にますます顔を上げられずにいたら、チャポンお湯が小さく跳ねた。
「たもくんとは一回腹を割って話しがしたいと思っていたんだ」
「和真さん、たもくんとはなんでもないの」
「分かってるよ。四季にとって彼は何でも話せるお兄ちゃんで、頼れる先輩。でも俺にとっては恋敵に変わりはない」
きっぱりと言い切ると両腕が背中に回ってきて。すっぽりと包み込むようにぎゅっと抱き締められた。
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