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気持ちを終わらせてしまうのには早すぎる。
そして、簡単に終わらせることが出来ないことも、薄々は感づいている。初めての感情をどう扱っていいのか、何が正解なのか分からずに、ただ持て余す。
でも、まだ、どんな形でも彼女の世界に存在していたい。
バスが高校の前で停まった。
ギターに手を伸ばし、紐を掴む。
「これ、借りる。つぎ雨が降ったら、バスに持ってくるよ。それまでに返して欲しかったら、高校まで取りに来て。……なっちゃん」
「え!? ちょっと、ハル君!」
ギターを背負って、傘を持ち、バスを駆け降りた。
少し強引だったかな、けど、視界に入る為にはぼんやりと忘れられてしまうような、些細な行動では弱い。
どうせなら少し困ったり怒ったりする顔も見てみたい。見えないアキという男に対抗するには僕の気持ちが大きいとアプローチするしかない。
去りゆくバスの窓越しに彼女は眉尻を下げ、僕に手を振っていた。
もっと困ればいい、そして、ギターを僕から取り返しに来ればいい。
肩に掛けた黒い紐を握って、校舎に向かう。
校門の横に植えられた金木犀の葉が揺れ、止んだ雨の雫が濡れたアスファルトにゆっくりと落ちていった。
not continue...✏︎*・゜゚・*:.。..。.
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