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ユラシル・リーバックの朝は早い。
朝日が昇る前に起床。清々しさすら感じる中起きたユラシルは自分でせっせと建てた木の家を出て外の空気を吸い込む。
家の隣にあるこれまた木を組み立てて作った小屋の中では青い鱗のドラゴンの子供リーンが気持ちよさそうに寝息を立てながら熟睡している。覗き込んでから起こさないように離れ、ユラシルは早朝のランニングに出かけた。
肺活量を鍛える鍛練。しかしただ一定の速度で長々と走るなんて初歩的な鍛練では無い。息を止めた状態での全力疾走、限界が来てから呼吸を整え再び無呼吸全力疾走と、これを繰り返しながら林の中を駆け抜けていく。
帰ってくる頃には汗だく。着ている服も汗で濡れ、ユラシルはそのまま近くの池に飛び込んで火照った体を冷ます。
休息ではない。ユラシルは仰向けのまま池に沈み込んでグッと目に力を籠め、自分の上だけに渦を作り出し池の水面から渦が飛び出して空中をウネウネと蠢く。
やがて分離して宙に水の球体が出来上がった。水滴一つ落とさないように集中しながら池から出たユラシルは水の球体を手元に引き寄せて、
「今日の朝飯獲得だな」
球体に閉じ込められた三匹の魚。自分の置かれた状況なんて理解してはいない魚たちを取り出して水だけ戻し家へ帰る。
『キャウ!』
「おっ、起きてんなリーン。朝飯にするぞ」
小屋から出て待っていたリーンは尻尾を振りながらユラシルの体に頭を擦り付ける。リーンなりの挨拶だ。
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