第1話 時を越えた最強の一日

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家の中で服を着替え、頭にタオルを巻いたまま外に出るとリーンが焚き火を用意していた。木の枝をくわえて集め口から火を吐いて朝食となる魚を焼くために用意したのだ。 一度ユラシルが教えただけでこうもすぐに実践出来るのだからドラゴンの知能が極めて高いのがわかる。成体になれば人間の言葉も話せるようになるのだ、焚き火くらい用意出来るのは当然かもしれない。 「下拵えは済ませてあるから焼いてくか~」 『キャウ!』 日の出頃に朝食。大きい魚二匹をリーンに食べさせ、残った一匹をユラシルが食べる。頭も骨も残さず食べ尽くしたユラシルとリーンは火を消して林の中へ向かった。 すぐに辿り着いた開けた空間。元は綺麗な草原だったが今では赤茶色の土や岩盤が剥き出しになっている。こんな有り様にしてしまったのはもちろんながらユラシルであり、この一角はユラシルの鍛練スペースになっている。 「『ワールド』は張ったし、やるか?リーン」 『キャン!』 世界に満ちる常人では不可視、不感知の自然の力『ワールド』。ユラシルはその力で鍛練スペースの周囲を囲い箱形の見えない結界を張った。 周りに被害を出さないため、離れた市街に影響を出さないための対策。そしてその中で行われるのは、人とドラゴンの格闘である。 「ンンッ──!!」 『ギャウッッ!!!』 ユラシルの回し蹴りとリーンの頭突きが激突。飛行からの助走もあって力負けしたユラシルが豪快に跳ね上げられてしまった。
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