中年のオヤジ

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中年のオヤジ

 昼休み、食堂へ向かう。マンモス校というだけあってだだっ広く、まるでショッピングセンターの飲食モールのような雰囲気であった。メニューも豊富でステーキから、有名ファーストフードのハンバーガー、そして素うどんまで選び放題の様相であった。只今、金欠中の俺は素うどんを注文する。 「お前、侘しい昼飯だな……」隣で原口がハンバーグ定食を頬張る。溢れ出る肉汁が美しい。 「ほっといてくれ。今、金欠病だからアルバイトを探して……」言いながら俺はうどんを啜る。 「あっ、この学校アルバイト絶対に禁止だからな」原口は器用にナイフとフォークを使ってハンバーグを細かく切って口に放り込む。 「な、なに!聞いてないぞ、そんなこと!!」今時アルバイトを禁止するなんて、時代に逆行している。「言いなから……、みんな隠れてやってるんだろ……」小さな声で聞いてみる。 「いいや、見つかると処罰されるからな。俺も少ない小遣いで遣り繰りしているんだよ」とハンバーグをまた一口、金が無いヤツがハンバーグ頼むか? 「じゃあ……」俺は絶望間に打ちひしがれる。金の無い高校生活なんて……。 「ああ、その代わりに学園内でのアルバイトは承認されてるんだ。厨房のほうを見ろよ」原口が顎で方向を示す。改めて見ると、食堂のオバチャンがいない。代わりに若い女の子達が汗だくで働いている。 「あれ、学生なのか!?」 「ああ、外でアルバイトだと、なにかとトラブルがあるとなんだから、学内で金のいる奴は働いているんだ。学費を稼いでる生徒もいるんだぜ」 「で、でも授業が……」こんな調理をしていたら、授業に参加する時間がないだろうと疑心暗鬼になる。 「その辺は調整が利くんだ。夕方から同じ授業をバーチャルでやったりしてさ」ハンバーグの香りが食欲をそそる。「なかには怪しいクラブで金儲けしてる奴らもいるみたいだから大阪君も気をつけてね」いえ、逢坂です。 「怪しいクラブか……」もう、俺の頭にはボッタクバーしか思い浮かばなくなっていた。 「ところで、スポーツとかやってたの?」原口が唐突に聞いてくる。 「ああ、小さい頃から空手をやっていて……」俺がそこまでいうと、彼は前のめりになって興味を示す。 「空手って、段を持ってるの!?」 「えーと、一応は黒帯だけど……」現在、俺の段位は二段であった。 「すごいなぁ、大きな声では言えないけれど、この学校って結構危ない奴もいるんだ。僕になにかあったら助けてくれよ」そういうと、人参をうどんの付属品である沢庵の皿に乗せてきた。どうせなら肉をくれ。人参嫌いなんだろコイツ。「でも、その割には小柄だよね君」人が気にしている事を聞いてくる。  俺の身長は165センチを少し越えたくらい。ちょっと背の高い女子に負けてしまうレベルだ 「でもさ、こんなに生徒が多いと顔を覚えるのも大変だよな……」一クラス百人以上いるのでなかなか時間がかかりそうだ。 「大丈夫だよ、俺だって半分も覚えてないから……」食べ終わったようで、学生服の前を開けてお腹をさすっている。その姿は中年のおっさんにしか見えなかった。
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