2人が本棚に入れています
本棚に追加
Handyman倶楽部
放課後、13号棟の4階一番奥の教室に来るようにと日暮先輩に言われる。ステーキをご馳走になってしまった手前、断る事も出来なくなってしまった。
原口に一緒に来てくれと頼むが、お母さんが急に危篤になったそうで慌てて帰っていった。
「あの……、すいません」俺は指定された部屋のドアをノックした。
「入りたまえ」中から聞こえた声は明らかに、日暮先輩のものであった。俺はコグリと唾を一飲みしてからゆっくりとドアを開く。
この学校にしては、比較的小さな部屋。ドアを開いた正面中央に大きなテーブルがあり、その中央に日暮先輩の姿。口には相変わらずタバコのようにスティック型のお菓子を咥えている。
「よく来てくれたね」いや、あんたが来いって言ったんでしょうが……。「そこに、腰掛けたまえ」俺の意思を無視したように展開が進んでいく。
「あの俺……、いや僕に何のご用なのでしょうか?」全く見当がつかず目が泳いでしまう。
「君は逸材だ。君のような生徒を探していたんだ」日暮先輩は前のめりになって微笑む。俺は逆にのけ反る。
「おっ疲れ様でーす」元気よく扉が開く。その声の主を見て、俺は思わず立ち上がってしまう。
「お、お前は……」そこにいたのはこのところ何かとトラブルの元になっているあの女であった。
「あ、あなた!こんなところで何してんのよ!」たしか詩織という名前であったと思う。彼女の反応も俺とよく似たような感じである。
「なんだ、君たちは知り合いか?話が早い。こちら我がクラブのメイキャップ担当の山口詩織君だ。で、こちらが逢坂なぎさ君、今日から、うちのクラブに入部することになった。仲良くしてくれよ」
「「え!!」」俺と詩織は同時に声をあげる。
「私は反対です!こんな……、変態を入部させるのは!!」詩織は机を両手で思いっきり叩いた。
「俺だって、こんな女のいるクラブなんて……!って、一体なんのクラブかも知らないって言うの!!」俺も負けないように机を叩く。
「あれ、言わなかったっけ?」日暮先輩は惚けたような顔をする。
「全くもって聞いていません!!」俺は自信をもって返答する。
「そうか。君が今日から入部する、そのクラブは……」まるでドラムでも鳴りそうな貯めである。
「ク、クラブは……!」俺はゴクリと唾を一飲みする。
「その名も、淀屋橋学院 Handyman倶楽部だ!」日暮先輩は立ち上がり握りこぶしを作って宣言した。
「な、なにそれ?」俺にはそれが一体何の事なのか、さっぱり解らなかった。
最初のコメントを投稿しよう!