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僕の貞操
「Handymanっていうのは、いわゆる便利屋、なんでも屋のことよ」いきなり声がする。声の主はあの日、詩織と一緒にいた。高原という女であった。
「便利屋って……、犬の散歩とか掃除とかするやつ?」俺の発想ではそんなもんである。
「まあ、そういうのもたまにはあるが、結構色々な依頼が来てね。その中には、女の子では無理な……、というよりも危険な物もあってね」日暮先輩は、足を組み変える。
「で、でも私達は女子だけで、今までやってきたのに、こんな……」詩織は俺を汚い物でも見るような顔で睨み付ける。こんなの後が何かは気になるところであるが、どうせろくでもない言葉だと思うので深く掘り下げないことにする。
「そうも言ってられないだろう。先日も梅田のエスカレーターで盗撮されかけたって言っていたじゃないか?」日暮先輩は、新しいお菓子をその唇に押し込んだ。
「そ、それは!」詩織はギロッと俺の顔を睨み付ける。隣で高原が吹き出しそうな顔をして笑いを堪えている。
「いや、あれは俺じゃないだろう!」なんだか俺が盗撮したような扱いになっている事に少し憤慨する。どちらかというと助けてやった方なのだが……。
「解っているわよ!」あっ解ってたんだ。
「とにかく最近、彼女の代わりをみたいな依頼も増えていて、中には勘違いする生徒もいる。そこで私は考えた……、別に女の子である必要は無いのではないかと」あらあら、なんだか先が読めて来たような、少し嫌な予感が……。「そして白羽の矢が君に立ったんだ」日暮先輩は俺を指差した。
「ちょっと、気分が悪くなって来たんで帰っても……」俺が立ち上がろうとすると高原ともう一人の女子が両肩を押さえつける。な、なんだこんな女何処にいたんだ!
「あっ、この服部は忍者の末裔で、気配を消すこととITに優れた部員だ」
「以後、お見知りおきを……」なんだ、忍者の末裔って!
「さあ、詩織君、君の出番だ」日暮先輩は、またニヤリと笑う。
「もう、仕方ないわね……」詩織は言いながら道具箱なような物を出して、俺の目の前に座る。
「や、止めろ!何をするんだ!!まさか改造人間に!」俺は抵抗するが逃げる事がままならない。服部という女……、只者ではない。
「あんた馬鹿じゃないの?もう観念しなさい」そういうと詩織はハケを取り出して、俺の顔になにやら塗りだした。
「キャー、いやー!やめて!!」まるで貞操を奪われるような悲鳴が部室の中を駆け抜けたのであった。
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