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明るい月明かりが反射するアスファルト
優しい潮の香りが風に乗って私を抜かす
待って、置いて行かないで
枝から葉が落ちて足元に来るときに
去ったはずの潮が僕を責めていた
待って、私も連れてって
ああしょっぱい潮の味
私はもう走れない
「んー、ピンとこないな。」
紙から目線を上げて、ちりんちりんと風鈴の音を聴く。スランプなんて言いたくないけど最近うまく書けない。
歌詞を書き始めて2年目、といっていいのかな。良くも悪くもそこそこの仕事しかない。作詞家と名乗れてるだけ良いのかもしれない。あるアイドルグループからは名指しで来るようになったし、有名な作曲家さんからはバラードの時に相談してきたり。イメージに合わせて作るのも仕事としてはちゃんとやるけど、僕の得意分野はバラード、らしい。切ない歌詞が高評価を貰ってる。
それはね、僕は何一つ成長していないままだから。
あの日から。
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