線香花火

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スタジオパズルは東條と良く来た場所だ。 小さいスタジオで、部屋数も5つしかない。大手と違って予約も電話でしか出来ないし、会員カードとかもない。楽器の貸し出しはやってない。最低限の販売はあるけど、サービス面は良くない。ただ値段はそれなりに安い。機材は普通。 AからEと名付けてある5部屋のうち2部屋はかなり狭い。5人組のバンドはここでは正直練習にならないだろう。個人練習か3ピースバンドが限界。1部屋だけ大きめで、他の部屋にはない鏡もついてる。 部屋の差が大きいのに、部屋で値段が分かれていないのは何でだろうと昔から疑問だったけど今もそのまま。知ってる客は必ず部屋も指定する。 僕たちは大抵狭い部屋。籠もって弾いて、繰り返して。ああ、懐かしい。…東條に会いたいな。 バイト始めて5ヶ月目。 カランカラン、 「すみません、18時に予約していた林です。」 「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。18時から2時間個人練習ですね、本日はAスタジオを取っております。マイクは必要ですか?」 「はい、お願いします。」 林様、もとい林くんは大学生で週3回は個人練習でここに来る。ドラムをやってるらしく、いつもスティックケースだけ片手に持ち、マイクを利用する。 Aスタジオは個人練向けの部屋で1番受付から近い。ドアに小さい窓があるけど角度的にドラムの位置が見えず、練習風景は見たことない。 スタジオのドアは2重扉になっており、とても重たい。そのかわり防音はしっかりしてる。 林くんを案内した後、立て続けに予約していた2組があり案内をした。一息ついたところで、どこかからドラムの音が聞こえているのに気付いた。Aスタジオの外扉が少し空いている。 僕は閉めに行こうと近いた。そしたらいつも聞こえない林くんの声、歌が聞こえた。 そして、それは、とても知っている、曲だった。
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