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学園のまにまに五話
五話
夏真っ盛りになった。
蝉もうるさく鳴き、激しく暑い。日本の夏はカラッとした暑さではないところが暑さを増幅させるのかもしれない。
得体のしれない虫は、うはうはと湧いて出て皆楽しそうに踊っている……。
正直苦手だ。
そしてもう一つ湧いて出るものが子供達である。
「なっつやすみだー!」
黒髪の少女、日高サキは『超常現象大好き部』の部室に来るなりそう叫んだ。
時期は放課後、終業式終了後の早帰りのお昼だった。
「やっと夏休みね。色々あって……長かった……」
部室の椅子に座っていた茶髪の少女、時野アヤはうんざりした顔で日高サキを見ていた。
「あ、日高さん遅かったね」
時野アヤの隣に座っていたのは唯一の男部員であり、この部を作った本人の俊也だ。
「ふふん、実はゲーム部に寄っていたのさ」
日高サキはよくぞ聞いてくれましたと言った風に胸を張った。
「ゲーム部ってテーブルゲームとかやっている部活だよね? こないだ、バックギャモンとか麻雀とかポン抜きとかページワンとかセブンブリッジとかやらせてもらったなあ」
「……全部大人なゲームね……。そしてマニアック……」
俊也の言葉に時野アヤは呆れたため息をついた。
「まあ、あたしはダイヤモンドゲームやりながらジャパゲー祭についての情報収集をしてたってわけさ」
「『じゃぱげーさい』って何?」
俊也は日高サキから当たり前のように言われてもピンとも来なかった。
「えー! 知らないのかい! ジャパニーズゴッティっていう日本の神様と恋愛できる恋愛シミュレーションゲームだけど、それのキャラを使ったバトルゲーム、ジャバニーズゴッティバトルってゲームの大会が開かれるのさ。」
「な、なんか難しい……」
早口に語る日高サキに俊也は頭を抱えた。元々は乙女が喜ぶイケメン多数の恋愛ゲームのようだが、登場キャラを使ったバトルゲームが姉妹作であるらしい。
「で? なんだかいやな予感がするのだけれど……」
時野アヤはあからさまに嫌そうな顔をしながら水筒のお茶を飲んでいた。
「それにうちのゲーム部が出るんだってさ。三人一組で」
「ぶっ……」
時野アヤはお茶を喉に詰まらせていた。
「それでねー……」
「ごほっ……もう先がわかるわ……。私達三人で出場したいって言うんでしょう?」
「さっすがアヤ! 話が早い! そうなんだ! 優勝は限定グッズなんだ! 全力で勝ちたい!」
日高サキは勢いよく時野アヤに人差し指を向けた。
「……はあ……私、そのゲーム興味ないんだけど……」
「俊也君! 俊也君はどうだい? もしかすると超常現象が起きるかも」
日高サキは何かたくらんでいるような顔で俊也を見据えてきた。
「え? あ、僕はあらかじめ日にちを言ってくれれば調整するよ? 夏休みはあまり暇したくないんだよ」
「八月十一日! 微妙に盆を外している所が策略だと思うんだ! じゃ、俊也君は空けといてね! で? アヤは?」
俊也が即答で行く事になったので時野アヤは煮え切らない顔をしていた。
「……俊也君が心配だし行くわよ。仕方ないわね。変な現象起こさないでよ」
俊也が行くと言えば必ずと言っていいほど時野アヤもついてくる。日高サキはそれを狙ったようであった。
「いえい! じゃあ、皆で行こう! 絶対優勝―!ファイ!」
「ふぁ、ファイ!」
日高サキにとりあえず合わせて、声を上げた俊也に時野アヤはまたも深いため息をついた。
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