学園のまにまに五話

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 そして八月の十一日になった。とてつもなく暑い日だった。蝉が姦しく鳴き、道路が太陽の熱で揺らいでみえる。  「暑い……。この会場もかなりの熱気だ……」  俊也はゲーム大会の会場である少し大きめのホールを見上げながら圧倒されていた。  「ほら、さっさと行くよ!」  やたらと気分上昇の日高サキは抑えきれないのかそそくさと会場内へと入って行く。  「なーんか……嫌な予感がするのよねぇ」  時野アヤが日高サキの背中を目で追いながら深くため息をついた。  「時野さん。行こうか」  俊也が声をかけると時野アヤは小さく頷いた。  二人は会場内へと足を運んだ。会場の部屋の一つに『ジャパニーズゴッティバトル! ゲーム大会会場!』とハイな文体で看板がかかっていた。  そこにはか弱くはなさそうなどちらかと言えば力強そうな女子達がチームを組み、まるで甲子園野球児のように燃えていた。  「うわあ……」  ライオンか何かにしか見えない女子達を前に俊也は青い顔で後ずさった。  「あー、エントリーして来たよ!」  ふと燃える女子達の中から日高サキが飛び出してきた。  「あ、おつかれ……。ところで僕達このゲームの練習すらしてないけど大丈夫なの?」  俊也は日高サキに声をかけつつ、心配事項を話した。  「大丈夫大丈夫! てきとーにやってくれればいいから」  「……あなた……まさか……」  時野アヤが日高サキを疑うような目で見ていた。何か良からぬことをしようとしているのではないかと疑っている目だ。   「ああ、あたしはそのまま出て、俊也君はてきとうにやってもらって、そんでアヤは……」  「……なんかあなたの隣でものすごく格式高いはずの神が呆れた顔して立っているけど……」  嬉々として語る日高サキの隣を時野アヤは凝視しつつ、ため息をついていた。  「そうそう。アヤの後ろから『みー君』を配置して……ほら、みー君は元々ゲーマーだから強いし人に見えないから、ちょうどいいっしょ? みー君に操作してもらうんだよ。いい考えじゃないかい?」  「全然いい考えじゃないわよ! なんでよりにもよってこんな超弩級の厄神を人が集まるゲーム大会に連れてくるわけ? あなた、太陽神をまとめる神でしょ! 馬鹿じゃないの!」  時野アヤは日高サキに対して非常に怒っていた。  怒っている時野アヤもかわいかったが……それよりも……  いままでで不思議だった内容がけっこう簡単に暴露されたような気がしないでもない。  ……そういやあ、みーくんって単語、前にも出てきたような……。  ……超弩級の厄神ってこのあいだの天御柱神って事か?  ……隣に……いるの⁉  俊也は若干青ざめた顔で日高サキの隣を見つめる。しかし、見えないのであまり気にしないようにした。   戦いが始まった。 会場は熱気に包まれている。 俊也は順番まで冷や汗をかきながら他のチームのプレイを見ていた。 目には見えない女の戦いが繰り広げられている事と、まわりの女性達のゲームの上手さが俊也を震わせている。 ……こえー……。 皆、顔が怖い……。 もっとワイワイ楽しくやるゲームじゃないの? これ……。 プレイ中の女性達が握っているコントローラーは、壊れるんじゃないかと思えるくらい激しくボタンが押されている。 ……というか、これ、けっこう操作が難しいんじゃ……。 俊也は観察している内にさらに顔を青くした。
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