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プルプル震えているだけの時間は残酷で、あっという間に日高サキ達チームの番になった。
……いやー! 順番きちゃったー!
俊也は時野アヤ達の前なので、努めて冷静にしていたが心はもう折れていた。
「あ、ちなみにさ……、僕は負けてもいいんだよね?」
完全に萎縮した俊也は、とりあえず日高サキに確認をとった。
「何言ってるんだい? 負けてもいいなんて言ってないよ! さあ! 気合いをいれるよー!」
日高サキはやたらと気合いを入れていた。俊也はもうだめだと思った。
実況アナウンサーが日高サキチームと相手方のチームを会場のステージへとあげる。
どよどよとした声と歓声が俊也を包んだ。
よく聞くとどよどよしている原因は俊也にあるらしい。
この会場内で唯一の男性参加者だからだろう。女性達の興味が俊也に向いていた。
……ひぃー……よくよく聞くとあの子、どんだけ上手いのかしらとか聞こえるー……。もうやだ。帰りたい。
「あ、じゃあ最初は俊也君! よろしく! こういうのはラストに主将が出ていくもんだから、最初はそんなに上手くない人が出てくるさ!」
俊也の心を丸無視した呑気な日高サキの声が耳に入ってきた。
もう逃げられない。俊也は仕方なくステージにあるゲーム機前に立った。コントローラーを持つが、ゲームをあまりやらない俊也はどのボタンがどれなのか全くわからない。
これはしばらくトラウマで何回か夢に出てくるかもしれない。
対するは小さな女の子だった。小学校低学年くらいかもしれない。かなり大人しい感じの少女だが、なんだかオーラを感じる。
このチームは応援団まで引き連れ「なんとか神愛」とか書いてあるハッピみたいのを着ている。ちなみになんとかの部分は、漢字で神の名前が書いてあるが難しくて読めなかった。
年齢はバラバラでなんかのコミュニティで出場している感じだった。
「第十五戦開始しますっ! キャラクターを選択してくださーい!」
アナウンサーが熱く叫んだので、俊也は慌てて操作するキャラクターを選ぶ。
……わっかんねぇー! 何がいいんだ? 横にスライドするには方向キーでいいのか?
まごまごしていたら時間切れでカーソルの合っていたキャラになっていた。
……えーと。天津彦根神(あまつひこねのかみ)? タイプ龍神? タイプ龍神って何?
気がつくと試合がスタートしていた。アクションゲームなので必殺技があるらしいがよくわからない。
「えーん……やり方がわからなーい……」
俊也は半泣きで方向キーを動かす。女の子は俊也の出方をうかがっているのか、まだ攻撃を仕掛けてこない。上手いと思われているらしい。悲しいことだが。
「もう! 何やってんだい! ガーッと倒すんだよ!」
日高サキが無茶な指示を飛ばし始めた。
「そ、そんなこと言われても……」
俊也がまごついていると女の子が攻撃を仕掛けてきた。当然だが女の子はとっても強かった。フルボッコにされ、ヒットポイントが残りわずかになっていた。
秒殺である。
「もー! 仕方ない! みー君! 俊也君を助けてあげておくれ!」
「何バカなこと言ってるのよ! 人間に厄神をつけるんじゃない!」
日高サキの発言に時野アヤは怖い顔で怒った。
「ちょっとだから平気だよー。みー君、お願い!」
日高サキが何にもない空間に手を合わせていた。
するとすぐに俊也に悪寒が走った。
「いっ⁉ なんだ! なんか気持ち悪い……」
寒くないのに寒く、変なものがあふれでてくるような気持ち悪さを感じる。
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