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ふと気がつくとコントローラーのボタンが触ってもいないのに勝手に動いていた。
「うぎゃあああ⁉」
俊也は恐ろしさのあまり叫んだ。
「こんっ、こんっ、コントローラーがっ!」
しかもコントローラーから手が離せない。何かに包み込まれている。
これは一種の恐怖である。
……呪いだ! 呪いのコントローラーだ!!
「た、助けて……」
俊也は情けない声で小さくつぶやくと、そのままぶっ倒れて気絶した。
「はっ!」
どれだけ経ったかわからないが、俊也は目を覚ました。気がつかない内にベッドに寝かされていた。会場内の医務室のようだ。
しばらくぼうっとしていた俊也は時野アヤの怒っている声を聞いた。
「だから言ったじゃない! 俊也君に厄神つけるバカどこにいるのよ! あなた、ほんとに太陽神のトップなわけ? 人間に混ざって生活している時神の私だって倒れそうなのに! 俊也君になんかあったら許さないからね!」
「すみましぇーん」
怒り心頭な時野アヤに反省の色がまったくない日高サキの声が重なる。
……なんかよくわかんないけど……時野さんが心配してくれてる……。
畜生! 好きだ!
とりあえず、俊也の気持ちはまとまった。
……あ、そういえば試合は?
俊也はゲーム大会の事を思い出し、勢いよく起き上がった。
起き上がるとすぐ目の前に時野アヤと日高サキがいた。
「あ、俊也君! 大丈夫?」
時野アヤが俊也に気が付き、心配そうにこちらを見た。
「う、うん。大丈夫。それよりゲーム大会どうなったの?」
「俊也君が気絶しちゃって二人になっちゃったから棄権したの」
「申し訳ないね……。なんか変な悪寒がして……。昨日はよく寝たはずだったんだけど……」
俊也の言葉に時野アヤは日高サキを睨んだ。
「サキィー……」
「だ、大丈夫! 大丈夫! ほんとは勝てた試合でグッズもゲットできたはずだったんだけど、し、仕方ない、仕方ない。あ、あたしの采配ミスって感じで……うん、そんな感じで……」
日高サキはなにかを隠すように歯切れが悪く答えた。
「なんで倒れたかわからないけど、なんかヤバい体験しちゃった気がする。緊張してたからかな? 大会台無しにしちゃったし、なんか冷たいパフェとか食べに行く? 僕がおごるから」
「え? ほんと! ありがとー! 気がきくじゃないかい! じゃあ、お言葉に甘えて……いでっ!」
日高サキがホクホクした顔をしているところへ時野アヤがパシッと軽く頭を叩いた。
「図々しいわ! あなたがおごってあげなさい!すべての元凶はあなたでしょ!」
「うう……わかりましたぁー」
「?」
時野アヤの発言に俊也は首をかしげた。
「ああ、俊也君、大丈夫よ。サキにおごらせるから好きなの食べましょ」
「え? なんかよくわからないけど、僕が倒れたのがいけなくない? なんで日高さんがおごるの?」
「いいから、いいから」
俊也の頭はハテナでいっぱいだった。
「あ、そうだ! この会場内のカフェでジャパゴ特別メニューがあるんだよ! そこ行こう!」
日高サキは元気を取り戻し、笑顔を俊也に向けた。
「う、うん。いいけど、一体何があったの?」
「なんもない。なんもないよ!」
日高サキと時野アヤにかなり誤魔化されたので、気にしないようにした。
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