オムニバス1 学園のまにまに

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オムニバス1 学園のまにまに

※本編前のストーリーです。 本編は「望月と闇の物語」からです。 死後の世界が舞台ですが、こちらは生前です。 a72ec036-3baf-4827-95f7-deaaf7bba375 6af50297-8156-4da9-a08c-a7bdc44bef38 bf35be04-4dc4-48d8-9c7c-e3a5170324ee  時は平成。携帯電話がスマートフォンに変わる時期。  先祖のことを何も知らない男子高校生が何も知らぬまま、生きる記録。  この歴史書。  望月家の歴史書に触れもしない……。  ただ、先祖達が神達と関わっていたことは気づくかもしれない。  歴史書に入る前に子孫達を見てみよう……。  凍夜(とうや)望月家滅亡後の彼らを。  僕は超常現象が大好きだ。まだ高校一年だし、大人でもないから別に現実を真剣に見なくてもいいと思っている。  超常現象が好きな人は大人になってもいっぱいいるし、僕も友達などにそういうのは全面的に好きだと言っている。  そしてあまりに好きすぎて部活みたいなものを作ってしまった。  その名も『超常現象大好き部』。  うん、普通だ。  その他にカッコいい名前を思いつかなかったので仕方ない。わかりやすくていいでしょ。  なんとなく、超常現象が好きな人達が集まって馬鹿な会話ができたらいいな……なんて思っていたんだけど、まさかこんなことになるなんてね。  これは僕がまとめた非現実の記録です。  桜の季節が終わり、ぽかぽかと暖かい日、窓から体育をやっている生徒達が見える。俊也(しゅんや)はぼけっとそれを上から眺めていた。ここは月影藤(つきかげふじ)高校内の三階の教室である。  追加で言うと現在は授業中だ。俊也は数学の先生の話を聞き流しながらよそ見ばかりしていた。彼は窓際の一番後ろの席なので、こんなによそ見をしているのに先生に気がつかれない。  俊也はすぐ下にある運動場から目を青い空へと向けた。  今は五月だ。ぽかぽかといい感じの陽気である。空には雲一つない。  ……そうだなあ……今、何の部活にも入ってないし……なんかやりたいなあ。  ……部活作ってみようかな……。僕が大好きな超常現象を語り合う部活。まあ、僕しかいないかもしれないけど。友達を誘っても皆忙しいだろうし。  俊也は深くため息をついた。  「あっ……」  そんな事を考えていた時、隣から女の子の声が小さく聞こえた。  俊也は隣に座っているクラスメイトの女の子をちらりと横目で見た。女の子は俊也の足に目を向けていた。  「ん?」  俊也は女の子の顔から目をそらし、自分の足に目を向けた。  俊也の右の足、上履きの先に消しゴムが落ちている。  「ああ……」  俊也は消しゴムを拾ってあげた。  「これ、君の? ええっと……」  俊也は隣の女の子の名前を思い出せなかった。学校に入学してから一か月も経っていなくてまだ、クラス内の子の顔と名前が一致してなかった。  「あ、ありがとう。私は時野アヤよ。そういえば話すのは初めてね。よろしく」  隣の女の子、アヤと名乗った可愛らしい感じの女の子は、俊也から消しゴムを受け取ると愛想よく笑った。  「う、うん」  俊也は一瞬ドキっとしたため、声が上ずってしまった。  ……ちょっとかわいいかも……。  俊也はそこから違う方向で色々考えてしまい、結局授業をほとんど聞いていなかった。  男の悲しいところである。  放課後になって俊也はカバンに教科書を詰め込むと、これから部活がある友達と二、三言会話をして別れた。時野アヤはもう教室にはいなかった。あまりいままで気にしたことはなかったが、よく思えば放課後に長々と教室にいた感じはない。  いつもいつの間にかいない……そんな感じだったように思う。  ……話したいなあと思うけど……どんな会話をすればいいかわからないしなあ……女の子ってどんな会話が好きなんだろ……。ファッションの話とかだったら僕じゃあ全然わかんないし……。  そんなことを思いながら俊也は教室を出た。  今現在は帰宅部なので、廊下を通って階段を降りて、学校から出て帰宅するのが主な部活だが、今日はただの帰宅部にはならないつもりでいた。  ……部活の申請をしてみよう……。
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