誕生日

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誕生日

「お誕生日おめでとう」 そう両親が言うとお店の人がケーキを運んできた。 周りのお客さんはこちらを見ている。 「ありがとうパパママ」 そう笑顔で言ったそういえば表面的な評価は下がらない。 笑顔が引き攣っていたかもしれないが。 仕方のないことだ日頃から表情筋を鍛えるべきか? 外面の為にそこまでする必要はないか。 そう考えながらも好きでもない大きないちごの乗ったショートケーキを口に押し込んだ。 「もうあんな事やめて2度としないで」 帰り道車の中で冷ややかな声で私は言った。 「分かったわ」 ミラーに少し映る母の顔は微笑っていたが声の冷ややかさでその1言には色々詰まっていると理解した。 私は両親が嫌いだ。 私は育ててくれるだけ感謝はしているが嫌いだ。 はやくこの家から出ていき自由になりたい。 永遠にそれだけを考えているとあっという間に地獄のような家につく。 ドアを開け入った瞬間。 視界が地面になり両親の脚だけが見えた。 あぁまたか。 私は殴られ吹っ飛んだのだ。 ならば次は蹴られる。 そう覚悟し舌を噛まないよう歯を食いしばった。 「お前という奴はいつもいつも馬鹿にしやがって」 「育ててもらって感謝もできないのか」 「お前の誕生日なんて来年こないように今日で終わらしてやろうか」 外では無口な父親は家に入り私をサンドバッグにするとよく喋りだし永遠に私に対する不満をぶちまける。 母親は顔こそ笑ってはいないがもうやめなさいよと少し嬉しそうな声で言うのだ。 どこまでコイツらは最低なのだ。 そしてこの家に産まれた自分も最低だ。 父親は結局私を1時間以上殴り蹴り続け満足したのかいつの間にか居なくなっていた。 記憶が飛ぶのにも慣れてきた。 染みるがお風呂に入りその日も暗い部屋で独り眠りについた。 夢では最低な家族は幸せに暮らしていた。 そんな夢を見るたびに現実世界はより最悪になる。 冬服になったばかりの制服に腕を通し仕事に行き両親が居ないリビングで朝食を取り学校へ行く。
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