家族

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「それで、俺達はどうするんだよ。」 頭の上の黒い物体Xこと、シンが語りかけてきます。 いつまでも両手で抱えていてはいざというときに融通がききにくいと思い、頭の上に乗せたのですが、案外居心地が良かったらしく、私が気にしなくても落ちないどころか頭を傾けても全くずれることが無いのでした。 「家に帰るんですよ。」 「お前が着替えてた所か。」 「そうです。」 もう日が落ちかけていました。 日が完全に落ちると、商店街もシャッター街のような様相になります。 もう店を閉めているところもありました。 「随分遅くなってしまったみたいですね。少し急ぎましょうか。お姉ちゃんを心配させてしまうのは本意ではないですし。」 「がんばるのはお前……葵だけどな。」 シンが名前を言い直しました。ちゃんと気をつけているみたいですね。急いでいなければ撫でていたところでした。 「ただいま帰りました。」 「おかえりなさい。葵ちゃん。」 家に帰ると、聞き慣れたおっとりとした関西訛りの口調でお姉ちゃんが出迎えてくれました。 お姉ちゃんとは、昔離れて暮らしていたことがあって、お姉ちゃんは関西訛りで話すのです。 「ずいぶん遅かったね。どこに行ってたん?」 「お父さんのところに行っていました。」 「えー、おとんのとこに行ってたん?うちも行きたかったなぁ。」 「そうなんですか?じゃあ今度から誘いますね。良い運動にもなりそうですし。」 「葵ちゃんがおぶってくれるってこと?」 「いいえ。の良い運動になると思いましてね。」 「えー、うち、そんなことしたら死んでまうわー。距離どれくらいあると思ってるんー?」 「距離的には5kmほどですよ。」 「その中に山道いっぱいあるやろー?」 「そうですね。できるだけ直線距離で行きますから。」 「やっぱり死んでまうわー。」 「お風呂沸いてるから先に入っておいでー。」 「ありがとうございます。」 私はお風呂場に向かいました。 そして洗面台の鏡を見たときに思い出したのです。 頭の上に鎮座する未確認生命体のことを。 「あっ」 「あっじゃないぞ。葵、俺のこと完全に忘れてただろ。」 「忘れていました。申し訳ありません……」 お姉ちゃんに気を取られすぎていて、紹介もできていませんでした。失敗です。 「まったく……まあいいや。葵は今から体を洗うのか?」 「はい。そうですよ。」 「じゃあ、俺は家の中をさんさく……」 「だめです。あなたも一緒に入ってください。」 「え、いや、でもさ、俺、性別無いけどどっちかっていうと男だと思うぜ?」 「私にはそうは見えませんので、お気遣いなく。」 「えぇ……」 というわけで、一緒にお風呂に入ることになりました。
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