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目的の場所へ誘導すると、目を閉じて深く息を吸う。
こうして己の内にある鬼を解き放つのだ。
気が満ちてきて血が沸き立つと、愛刀の鯉口を切る。
「お望みどおり、相手になってやろう」
まずは一人目。
狙いを定めると、刀を抜く勢いで相手の刀を跳ね上げ、額を斬る。
そして次は振り上がった刀を返し、相手の肩から袈裟懸けに斬る。
無我夢中に斬っているうちに、敵の士気が下がっていくのが分かった。
「どうする?刀を納めるなら、命だけは助けてやってもいいが」
仲間が次々と倒されていくことに怖気づいて戦意を失くした浪士にむけて、総司は譲歩する。
私だってなにも、斬りたくて殺っている訳ではない。
相手が刀を抜いたから私もそれに応じた、ただそれだけのこと。
それ以上でもそれ以下でもない。
斬り合いとは、命の遣り取りなのだ。甘いことを言ってはいられない。
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