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プロローグ
多くのものが移ろい行く、変革の時代。皆がお国のため、日の本のためと命を賭して闘った。
そんななか彼は、敬愛するただ一人の男のために刀を執った。
たとえ自分がどんな状況にあろうとも彼は、師匠の剣となり、闘うことを望んだ。
そう、どんな時でも…
本音を言うと、私はほんの少しだけ嫉妬していたのかもしれない。
師匠のことを慕うのはいいけれど、せめてもう少しご自分の体を労ってくださればいいのにーー
自らの身すら顧みずに闘う彼が見ていられなくて、私は医者として支える道を選んだ。
私はお役に立てたのか
彼は最期まで幸せだっただろうか
胸の内に残る疑問は、ぶつける相手を失いひとり虚しく響くばかり。
今となってはもう、その答えを知ることは出来ない。
最期まで己の道を貫いた彼の生き様は、誠の武士そのものだった。
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