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帰宅した大和は小さくため息を付いて、リビングのソファに腰を落とした。 偶然に恭太とモモに会い、思いがけず楽しい休日を過ごせた。 途中までは。 大和が帰省した時に、瑠羽と会い、相手への印象を変えたのはどうやら大和だけでは無かったようだ。 ある日のライブハウスでの出来事。 その日は蓮も来ていた。 蓮はドラマも決まり、これまでよりも忙しい日常を送っていて、今までの様にライブに足を運ぶ事も難しくなっていた。 途中で帰ったり、逆に途中から来たり。 始まる前だけや、終わった後に少しだけ顔を出す事もあった。 それ程までに瑠羽に会いたいのだろう。 そして、とある出来事のあった日。 その日は久しぶりにスタート前から終わるまでずっといられる時間が作れたと、蓮はとても喜んでいた。 ライブ開始前の楽屋で、相変わらず瑠羽に話し掛け、楽しんでいた蓮だったが、瑠羽の一言で空気が一変した。 何気なく付けられていたテレビ。 大和が出ているコマーシャルが流れると、誰からともなく、大和の会話になった。 大和の出ているドラマや映画。 それらの感想と共に、蓮に対して、彼は元気でやっているかをメンバーが尋ねた時、 「また、木下さん誘えば?」 何気なく瑠羽が蓮に問いかけた。 その瞬間、蓮の顔から笑顔が消え、 「なんで? なんで、大和くんを誘って欲しいの? 瑠羽ちゃん、大和くんに会いたいの?」 瑠羽に詰め寄った。 それは異様な空気だったと、恭太は語った。 特に深い意味は無いと、瑠羽は答えたが、蓮の様子に驚いていた。 それでも、なんで?なんで?としつこく詰め寄る蓮は明らかに様子がおかしかった。 結局、瑠羽がうるさいと一喝し、蓮は普段の様子に戻った様だった。 蓮が焼きもち焼きなのだろうというのは、メンバーも察していた。 しかし、一言、大和の名前を出しただけであんな風になるだろうか。 そもそも、蓮は大和と友人関係であり、初めに連れてきたのも蓮だ。 なんだか腑に落ちない感は否めなかったが、メンバーはそれ以上、大和の名前を出すのをやめた。 蓮の様子も気にはなったが、恭太は、 『また、木下さん誘えば?』 という、瑠羽のセリフも気になっていた。 失礼な物言いをして、決して良かったとは言えない初対面。 しかし、大和が帰省先で、瑠羽と会って会話を交わしたという話で合点がいった。 しかも、大和はウタの事を知っている。 それだけでも瑠羽にとってみたら、大きな意味を持つ。 瑠羽は、大和へ関心を示しているのだろう。 大和は瑠羽が自分への印象を上げている事へは素直に嬉しさにも似た感情を抱いた。 だが、やはり問題は蓮だ。 「帰省先で瑠羽さんに会った事、蓮さんに言いましたか?」 モモが少し心配そうな顔をして聞いてきた。 初めてライブに行った日から、偶然に会って会話を交わした事は蓮に伝えたが、帰省先で会った事も、自分がウタを知っている事も伝えていない。 そもそも、自分が蓮に会ったのは、そのライブハウスでの出来事があってからだ。 何が原因なのか、どんな心境の変化なのか、それは当人しか分からない事ではあったが、最近の蓮はこれまでよりも瑠羽に執着している様で、様子がおかしいと恭太達は心配そうな顔をしていた。 大和はまたため息をつくと、ソファに項垂れる様に横になった。 ソファの前に置かれたテーブルに置いた携帯電話が視界の隅にうつる。 その時 携帯電話が鳴り出した。 大和は慌てて起き上がり、画面を確認する。 それは、マネージャーからの着信だった。 大和は1度頭を掻き、苦笑いを浮かべる。 帰宅してから、何だかソワソワした、落ち着かない感覚を感じていた。 蓮の事も、彼を心配し戸惑う恭太達の事も気がかりではあったが、自覚も無い心の奥底で、大和は待ちわびていた。 瑠羽からの連絡を。
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