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翌日 早朝からスタジオでの雑誌の撮影の仕事の為、迎えに来てくれたマネージャーの車に大和は乗り込んだ。 1つ大きな欠伸をすると、携帯電話の画面を見る。 結局、昨日は瑠羽から連絡がくる事はなかった。 まぁ、仕方ない、と大和は小さく息を吐くと、携帯電話をカバンにしまった。 スタジオに到着すると、早々に準備が進み、撮影が始まった。 モデル出身の大和は、魅せ方もよく分かっていて、ポーズを決める事に、惚けた女性スタッフから、熱い吐息が漏れる様だった。 大和も撮られた写真を確認しつつ、撮影は進み、それが終わると、今度はインタビューに進んだ。 「少し雰囲気が変わりましたね。」 インタビュアーがテープを止めた後、お疲れ様でしたと声を掛け、大和にそう言った。 「そうですか?」 不思議そうな顔をして聞き返す。 「前は、多くを語らないイメージでしたけど、今日は結構色々な視点で語ってくれたなと思って。」 確かにそうかもしれない。 大和は先程まで行っていたインタビューを思い返しながら思った。 役者として作品に出演する思い これからの描くビション これまでは、与えられたものをきっちりこなすのみだと発言していた大和は、それに加え、過去の自分を受け入れて、そして、どの様に活かしていくのか、そんな考えも生まれていた。 過去の挫折を味合わない為に、避けるのでは無く、何度挫けても、笑われる事になっても、譲れない何かを自分の中で確立したい。 改めて、過去に向き合えたあの帰省は正解だと感じたし、きっかけをくれた瑠羽に感謝した。 控え室に戻り、次の仕事場へ向かう為に準備をする。 その日は雑誌の取材があと数本と、夕方からバラエティ番組の収録が予定されていた。 マネージャーの運転する車に乗り込み、大和は流れゆく景色を眺めていた。 すると、大和の携帯が震えた。 画面を確認すると、 『こんにちは。瑠羽です。 恭太から連絡先を受け取ったのでメールしました。 木下さんの携帯で合ってますか?』 それは、瑠羽からの連絡だった。 直接顔を合わせて話しをしてる時は敬語なんて使わないのに、メールだと敬語なんだな。 大和は少しおかしくて、画面を見ながらフフっと笑ってしまった。 『連絡ありがとう。 木下です。 瑠羽ちゃんに渡したいものがあって、恭太にお願いしたんだけど、ちゃんと連絡もらえてよかったよ。 今は仕事が立て込んでるので、後でまた連絡します。』 『分かりました。』 瑠羽に渡したいもの 帰省して瑠羽と偶然の再会をし、彼女の話しを聞いた大和は、あれから、とある探し物をしていた。 それがようやく見つかり、きっと今日辺りに大和の自宅に届くはずだ。 昨日、恭太達と居た時に来たメールは、探し物を見つけてくれた人からの発送した連絡だった。 きっと、瑠羽は喜んでくれる。 そう信じて疑わなかった大和は、喜ぶ彼女の姿を思い描き、自然と笑みが零れた。
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