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ライブは進み、 「最後の曲です。 "恋蛍"」 いよいよ最後の曲となった。 アコースティックギターを切なく鳴らし、力強くも暖かい歌声が広がってゆく。 愛しい誰かを想う様な、美しいバラード。 この曲は…… 大和は思い出した。 聞き覚えのある歌。 瑠羽とウタの墓参りに行った時、瑠羽が口ずさんでいた歌だった。 その時、聞いた事がある気がしていたが、ウタの曲だったのだ。 瑠羽はこの歌が好きなのだろう。 彼女がウタと出会った時は、既に夢を断念した後だったが、聞かせてあげてたのかもしれない。 その時、小さく呻く様な声がし、大和は瑠羽を見やった。 瑠羽は両手で口元を押さえ、画面を凝視したまま、泣いていた。 涙は止めどなく流れ、声が漏れない様にか、抑えていた手が震えていて、瑠羽はやがて画面から顔を外し俯いた。 「…ウタ…ウタ…」 瑠羽は繰り返しウタの名を呼び、それでも、泣くのを堪えようとしているのか、息がとても苦しそうだった。 「瑠羽ちゃん…」 大和は心配そうに瑠羽の肩に手を置くと、彼女は涙でぐちゃぐちゃな顔を上げ、大和を静かに見た。 「ウタに…会いたい…」 小さく呟くと、徐々に顔を歪めていき、再び俯いて泣き出した。 そんな瑠羽を抱く様に、優しいウタの歌声が部屋に響く。 しかし、それは今の彼女の悲しみを助長するだけであった。 大和はDVDを停止させ、変わらずウタの名を呼び、彼を求める瑠羽を悲しそうに顔を歪めて見つめた。 やはり、余計な事をしてしまった。 喜ばせたかっただけなのに。 自分がした事は、ただ傷を抉る様な行為だったのかもしれない。 こうなってしまう事を恐れて、瑠羽は一緒に見る事を望んだんだ。 1人では耐えられないと― 瑠羽の中で、ウタの死は受け入れられている様で、全くそんな事はなく、ほんの小さなきっかけさえあれば、こうやって崩れてしまう。 愛する人を失った悲しみ 残された者の苦悩 自分は何もわかっていなかった。 今、目の前にいるのは、いつもハッキリとした口調で芯の通った凛とした女性ではなく、悲しみや寂しさや恋しさで体を震わす、弱々しい女の子だった。 大和はおもむろに瑠羽を抱き締めた。 ウタ以外の人の温もりなど欲してないかもしれない。 でも、大丈夫だよ 君は1人じゃない 大丈夫だよ 口にはしないが、大和はそんな思いで瑠羽の事を抱き締めた。 瑠羽は大和にふいに抱き締められ、少しだけ呆然としていたが、彼の心臓の鼓動を感じ、それが自身の鼓動と重なり、互いの体を駆け巡る感覚を感じると、やがて更に大きな声を上げて泣き出した。 なぁ、蓮。 この子はお前が思ってる様な強い子じゃないよ。 傷を必死に隠して、必死に強がってるだけなんだ。 大和は、瑠羽をなだめるように、体に回した手で背中をトントンと叩いた。 瑠羽は大和に回した手に力を込める。 悲しそうに顔を歪め、大和も抱き締める腕に力を込めた。
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