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22
しばらくして、落ち着いてきた瑠羽は、大和からそっと体を離した。
「ごめん。」
瑠羽は俯いて小さく呟いた。
「いや、俺こそごめんな。
ウタさんを見せて上げれたら、喜ぶかなって…ちょっと軽率な考えだったよ。」
「そんな事ない!」
申し訳なさそうに眉を下げ、謝罪した大和に、瑠羽は声を張り上げた。
「私の知らないウタの姿を見るのに、少しだけ決意が足らなくて…
でも、わざわざ探してくれて、本当に嬉しかった。
ありがとう。」
瑠羽が頭を下げお礼を言うと、大和は安心した様に微笑んだ。
それから、少しして帰宅する事になった大和。
「今日は本当にありがとう。
一緒に見て、とかワガママ言ってごめんね。」
玄関先で、申し訳なさそうに眉を下げる瑠羽に、大和は少し笑うと、
「いいよいいよ。
気にすんな。」
優しく彼女の頭を撫でた。
「子供扱いすんな。」
その手を、瑠羽は軽く払い除ける。
すっかり、いつも通りの瑠羽に戻った様で、安心した大和は、いたずらっぽい笑みを浮かべて、ぐしゃぐしゃっと強めに瑠羽の頭を撫でた。
「ちょっと!やめてよ!」
少しだけムキになって怒る素振りを見せる瑠羽を見て、大和は吹き出すように笑うと、
「じゃあな。」
微笑んで、頭を優しくポンポンと叩いた。
外に出て車に向かいながら時計を確認すると、夜中の1時近かった。
急いで自宅を出発した大和は軽装で、この時期の夜の寒さに少しだけ身震いをした。
フゥと息を漏らしながら、車に乗り込むと、こちらに走りよる人の気配に気がついた。
少しドキっとしながら、確認できたその人物は、大和の乗り込んだ車の運転席の窓付近で立ち止まり、手を振っていた。
それは、瑠羽だった。
「どうした?」
窓を開けて大和が問いかけると、
「これ」
と言って、瑠羽は何かを差し出した。
それは、赤い色でノルディック柄のブランケットだった。
「寒そうな格好だったから。」
「おぉ。ありがとう。
でも、車に乗っちゃえば大丈夫だよ。」
大和はそう言ったが、
「せっかく持ってきたんだから、使って!」
瑠羽は半ば強引に大和に大和に押し付けると、
「気をつけて帰ってね。」
と、自宅へと走って戻って行った。
大和は何だかおかしくて、少し笑うと、ブランケットを広げて膝にかけ、車を発進させた。
本当に可愛い子だな。
ふとそう思う。
瑠羽は、気が強く真っ直ぐな性格に、人付き合いの下手さがマイナスの作用を起こし、人を寄せ付けないオーラまで感じさせる。
でも、接して行けば、本来持ち合わせる素直さや、強がっている部分などが可愛らしく思えてくる。
ウタの映像を見て、泣き出してしまった瑠羽を抱き締めたのは、彼女を落ち着かせる為。
でも、自分の腕の中で泣き喚く彼女を、純粋に守ってあげたいと思った。
大和は確実に瑠羽に惹かれ始めていた。
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