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生放送の出演を終えると、大和は行きつけのご飯屋に連絡を入れ個室の予約をした。 帰り支度を済ませ、タクシーで店に向かうと、数十分後到着した。 本番を終え、楽屋に戻った大和の携帯には、蓮から 『いいよ。 店決めたら連絡して。』 返答が来ていた。 大和は、素直に蓮の事が心配だった。 今後、俳優としてやっていくにあたって、私情を持ち込んで、役を演じられないのは致命的だ。 大和は蓮と初めて会った時の事を思い出していた。 映画で共演する数年前、今回の様な多くの俳優が多く集まる番組で2人は初めて顔を合わした。 新人俳優として注目されたばかりの蓮は、キラキラと目を輝かせて、俳優としての夢を語っていた。 元々、蓮が大和に憧れを抱いていた事もあり、その時に、声を掛けられた。 自分と違って、俳優としての夢を追い、そして叶え、向上心を持って頑張る蓮に好感を抱いていた。 それから、初めて共演を果たした時、とても嬉しく思った事を覚えている。 自分の様に、運だけで成り上がった奴に何も言われたくないだろう。 瑠羽を想って生きていく事を間違った事とは言わない。 でも、そこを割り切らず、今のまま活動するのは無理な事だ。 そもそも、そんな半端な状態を、あの瑠羽が良しとするはずもない。 先に店に到着し、部屋で待つ大和は、蓮の事を思い、ため息を着いた。 「おつかれ~」 しばらくすると、蓮が部屋へと入ってきた。 フーと息を吐きながら、席に着くと、店員に飲み物を頼んだ。 「お前、大丈夫か?」 「え~?何が?」 間もなく、運ばれてきた飲みのもを飲みながら、蓮は笑った。 「疲れてるっぽいからさ。」 「あぁ。まぁね。」 色々、忙しいんだよ、ボクも。 蓮は大和からそっと目を逸らした。 大和は1つため息を着くと、 「前回会った時…カッとなって悪かったな。」 ひとまず、わだかまりを解消しようと、謝った。 「謝ってくれなくてもいいよ。 そもそも、あれはボクが大和くんに突っかかっていっただけで、悪いのは大和くんじゃないでしょ。」 「…まぁ…そうかもしれないけど…」 「それで、今日は何でご飯誘ってきたの? 謝る為?」 蓮は、困った表情を浮かべる大和に構うことなく、そう問いかけてきた。 真っ直ぐ見つめる蓮の目は以前とはまるで違う。 煩わしい そんな感情しか感じられない。 人懐こく、ニコニコしていた蓮に癒され、弟の様な友人が出来たと嬉しく思っていたのに。 どうして、ここまで関係が悪化してしまったんだろう。 それは、考えるまでもなく瑠羽の事が原因であるのは分かっていた。 だけど、腑に落ちない。 瑠羽は大和に対して特別な感情を抱いている訳でもなく、蓮にとって大和がライバル的な位置にいるのではない。 現在の大和は瑠羽に対して好意があり、連絡も取っている。 でも、それは、蓮の知る所ではない。 「ちょっと小耳に挟んだんだけど… お前、ドラマでキスシーンはしたくないって監督と揉めたんだって?」 大和がそう言うと、蓮は、その話かと、更にうんざりした表情を見せた。 「演出にケチを付ける程の理由があるなら別だけどさ…」 「ボクは、瑠羽ちゃんが好きなんだ。 ケチを付ける程の理由だよ。」 蓮は真顔で答えた。 「いや、そんなの理由にならないだろって! そんなん、誰だって納得いかないだろ。 お前が彼女を好きなのは分かるよ。 でも、それとこれとは別の話だろ?」 蓮は大和から視線を外し、怪訝そうな顔をしていた。 「なぁ、蓮。 私情を挟みながらじゃ、この仕事はやっていけないぞ?」 「わざわざ、説教する為に呼んだの? ボクの事なんて、どうだっていいじゃん。」 大和は純粋に蓮を心配していた。 俳優として、人気が上がってきて、頑張っている蓮を応援していたからこそ、諭そうとしていたが、蓮には何も届かないのかと、ショックさすら感じる。 「説教とかそんなんじゃなくて、心配してるんだよ、蓮の事。」 「……したよ。 ちゃんとキスシーンしたよ! 何か頭とか心とかずっと、モヤモヤしてるんだ。 ボク、疲れてるんだ。 もう放っといていいよ。」 蓮は悲しそうに眉を下げながら、大和に思いをぶつける。 「お前…どうしたんだよ。 何かあったんだったら聞くぞ?」 大和が心配そうに問いかけると、更に蓮は顔を歪めた。 「…ボク、帰るね。」 蓮はスっと立ち上がり、 「おい!蓮!」 大和の呼び掛けに振り向く事無く、店を後にした。
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