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いつもと変わらぬ日常 そんなある日 突然、最悪な事態は訪れる事となった。 早朝からの仕事で、いつもの様に自宅まで迎えに来てくれたマネージャーの車に乗り込み、大和は流れる景色を眺めながら、その日に撮影されるシーンのイメージトレーニングをしていた。 撮影に使用するスタジオに到着した所で、マネージャーに電話がかかってきた。 応対するマネージャーの声が驚きから、神妙なものとなり、まだ車内にいた大和は何かあったのだろうと察する。 電話を切ったマネージャーは、困惑した様な表情で、後部座席の大和に振り返った。 「木下さん…」 「どうかしたんですか?」 「佐山さんが、行方不明らしいです… 最近、連絡とか取ってませんか?」 「え!? 行方不明!?」 電話は蓮のマネージャーからだった。 一昨日まで、普通にドラマの撮影をしていた蓮だか、昨日、自宅まで迎えに行ったマネージャーが電話をかけたが、繋がらず、困り果てたマネージャーは、何かあったのかもしれないと、管理人に言ってドアを開けてもらった。 しかし、蓮は自宅におらず、今も尚連絡が取れない。 昨日も今日もドラマやその他の仕事が入っていたが、急な体調不良と言う事にして、事務所の人間が探し回っている。 どうしたものかと頭を抱えている状態で、警察に捜索願いを出そうかと話しも出ているそうだが、ひとまず、仲のよかった人達に連絡をして回っていた。 「最近は連絡、取ってないです…」 あいつは、何をやっているんだ… このまま、見つからなかったら、いつまでも隠しておける事じゃない。 どれだけの騒ぎになるだろうか。 そして、どれだけの人に迷惑がかかるだろうか。 大和は蓮に電話をかけてみたが、やはり聞こえるのは電話が繋がらないアナウンス。 発信履歴に並ぶ蓮の名前を見つめていた大和は、途端に胸の奥の方がザワザワしてくる感じがした。 仕事を投げ出して行方をくらませた蓮。 今どこで何をしてるのだろう。 目的はー 何かあったのだろうか 無事でいるのか… とてつもなく押し寄せる負のイメージに心臓がキリキリと痛む。 こんな状態で仕事に挑まなくてはいけない事に、精神的な辛さを感じてはいたが、きちんとこなさなくてはと、大和は大きく深呼吸をした。 すると、突然脳裏に、瑠羽の顔が浮かぶ。 楽屋に移動してきた大和は、もう間もなくスタッフに呼ばれてしまうだろう、その短い時間に、恭太に電話をかけた。 その日、ライブがあるというRose thorns。 時間の無い中、蓮の状況を簡潔に話し、 「もしかしたら、瑠羽の所に連絡か、もしくは直接会いに行くかもしれない。 こういうのは、少し大袈裟かもしれないけど、しばらくは瑠羽を1人にしない方がいいかもしれない。」 大和はそう助言し、 「分かりました…」 緊張した声色で恭太は答えた。 何とか集中力を保ちながら、大和は仕事をこなしていく。 夕方、別の仕事場への移動の為、マネージャーの運転する車に乗車していた大和は、携帯電話に恭太からの着信が来ていた事に気がついた。 何かあったのだろうか 再び沸き起こる嫌な予感 自然と鼓動の高鳴りが大きくなってくる。 かけ直そうと思ったその矢先、何の気なしに付けられていた車内のテレビで放送されていた、夕方のニュースを見て、大和は愕然とし、持っていた携帯電話が手からすり落ちた。 『俳優の佐山 蓮さんが、知人の女性の腹部を刃物で刺し、その場に駆け付けた警察官に逮捕されました。』 女性キャスターによって読まれたその言葉と、 「人気絶頂の俳優 佐山 蓮 女性を刺し逮捕」 画面に入れられた衝撃のテロップ 大和は全身の血の気が引いて行く様だった。 現場でアナウンサーがリポートする映像が映し出される。 そこはRose thornsがよく出演しているライブハウスだった。 そして、事件の起きた時間の後に掛けられてきていた恭太からの電話。 どうか どうか 見当違いであってくれ 報道が出ている以上、蓮が女性を刺してしまった事は事実。 その相手が瑠羽でなければ…なんて、他の人であれば…なんて、冷静に考えたら酷い考えではある。 それでも、その時の大和はそう願わずには居られなかった。 しかし、そんな願いは一瞬で崩れ去る。 被害者の女性の名前がテレビに映った。 『藍沢 瑠羽』 そう それは、紛れもなく 瑠羽だった。
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