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瑠羽は、亡くなったしまった恋人、ウタをいつまでも、当時と変わらぬ想いで慕っていた。
瑠羽に想いを寄せる蓮がそれを良く思っていなかった事は分かっていた。
かつての恋人とどれだけの思い出があろうと
どれだけの深い想いがあろうと
それらが更新される事などない。
現実世界で彼女を想う蓮は、何故いつまでも、瑠羽がウタを想い続けるのか、何故、自分を見てくれないのか
それが不思議で
それが憎かった。
忙しなく回り続ける自身の仕事に追われ、それに加え思う様にいかない瑠羽との関係。
やがて蓮は、異常な程の執着心を持つ様になり、精神を病んでいたと言っても過言ではない。
瑠羽のウタに対する愛情が本物であるならば、自分の愛情は偽物なのか―?
それ故の
『確認したい』
だったのかもしれない。
そして、行動のきっかけとなったのが、新たに彼に舞い込んだ仕事の役柄ではないかと、推測された。
漠然と、瑠羽が自分の前から姿を消したとしても、今と変わらず想い続けているのだろうか
そう考えていた蓮の元に舞い込んだ役柄は、彼を一層深い場所へと落とした。
亡くなってしまった恋人を想い続け、生前に共に歩んだ道を振り返る、とても綺麗で真っ直ぐなお話。
残された側の男性のオファーが来た蓮は、
『残された側は、変わらない現実を生きなくてはいけないのに、傍にいない恋人を、傍にいた時と変わらず想い続けるってどんな心情なんだろうね。』
マネージャーにそう問いかけ、その翌日失踪した。
失踪する少し前から、彼の様子がおかしかった事、瑠羽を殺害する事で、自身の愛を確かめようとしたとする殺害動機。
事件を起こした当時、彼には正常な判断が行えない状態であった
弁護士側の主張に、蓮は病院へ移送され、鑑定留置される事になったと報道は告げていた。
彼が精神を病み、正常な判断が出来なかったのかもしれないと言うのは、近くで見ていたから理解出来た。
それが、認められたら、蓮は無罪となり、そのまま治療の為に入院となるだろう。
でも、それでいいのだろうか。
瑠羽の為にも
そして
蓮自身の為にも
このままでいいはずは無かった。
ふと気がつくと、窓の外が暗くなっている事に気が付き、開いていたカーテンを閉めるため、大和は立ち上がった。
窓付近に近寄ると、外では強い雨が降り注いでいた。
強く打ち付ける雨と
身震いする程の寒さ
そこはかとない物悲しさが大和を襲う。
どうしてこんな事になってしまったんだろう
どうにも出来なかった自身の無力さに怒りを覚える。
当時と変わらぬ熱量でウタを想う瑠羽
そして、起こしてしまった行動は、とても許される事ではないけれど、それだけの強い想いを、瑠羽に寄せていた蓮。
大和は伏し目がちにカーテンを閉めると、電気も点けず、暗い部屋の中で静かにソファに腰を落とした。
瑠羽の事が好きだ。
だからこそ、彼女が幸せであればいいと思っている。
好きだからこそ、彼女のウタへの愛の深さが分かり、自身の気持ちを押し出すよりも、瑠羽自身の気持ちを尊重したいと考えていた。
愛情の持ち方は人それぞれ。
伴う結果に左右される事はあれど、愛に対しての見解に正解はない。
あるとしても、自分にそれを正す権利はないだろう。
自分の気持ちは隠したまま、友人として接点を作り、想い人が幸せであればいいと願いながら、何もする力を持たない。
想い人に真っ直ぐ心を向ける2人を思うと、何だか自分がひどく弱くちっぽけで
卑怯な気さえしていた。
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